これもどこかから、風に乗ってやってきたのでしょう。
家のまわりをふらっと散歩していた時にね、彼の兄弟を見つけたの。
あぁ、やっぱりあるんだなって。
背の高いやつも。
本当は…、知っていたのかも知れないね。
かつて、見ていたかも知れない。
でもね、この年になって、初めて気が付かされることって…、あるよね。
この場所は、植物たちにとって快適な場所。
温かで、ちょうど良い日の光が、彼らを元気にしてくれる。
この高いたんぽぽも、「Max」かと思われた予想をはるかに超えて、
わくわくしてくるくらい、ここまで伸びてくれた。
上にばかり伸びることをおぼえて、
下がおぼつかない、軽い鉢植えだということを、彼は忘れているから、
よく、ひっくり返っていて、何度僕が起こしてあげたことだろう。
---その日は、めずらしくひっくり返ってなかった日だったの。
神棚の水を替えようと、ベランダの戸を開けたその刹那…
ばぁーっと風が吹いて、まるで解き放たれた白い風船のように、綿毛が飛んだのね。
僕は、もう綿毛が出来ていることも知らなかったから、びっくりしてしまって!
一度、たんぽぽから離れた綿毛は、もうここに戻ってくることはなくてね。
その時はまだ、綿毛同士かたまったままで、そこらへんをふわふわしていたんだけれど、
これから彼らは旅立って行くんだな、と思ったら、なんだか感傷的になってね。
みんなに見せた背の高いほうのこの写真も、すでに何日か前のものだけれども、
ついさっき見てみたら、
まだ少しだけお花が咲いていて、
強くてたくましくて元気で、
そいで相変わらず、ごろんとひっくり返っていたんだよ。
夢千代