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あの日とおなじ海を見ているはずなのに、あなたと見る今日の海は違っている。
気がつけば、いつも微笑っている私がいる。
硝子越しに目の前を通るおおきな船が、いつのまにかとても遠くへ、過ぎてゆくように、
つい昨日のことのような心の痛みも、忘れていることにふと気がつく。
いつかみたあの映画も、繰り返し読んでボロっちくなってしまったこの本も、
いつかみたあの映画も、繰り返し読んでボロっちくなってしまったこの本も、
いまだって変わらずに大好きだけれど、
あんなに奪われることを怖れてあがいていた頃は、
ひとりぼっちで、とても窮屈で、太陽がきらいだった。
あのころとおなじまちのなかで暮らしながら、私は大人になったかなって、想う。
何度も困らせたあなたの顔に刻まれた、目のよこにあるくしゃっとしたシワの数は、
わたしが犯した罪の記し。
そのシワの奥にある瞳は、何度でも私をゆるし、何度でも私を救ってきた。
「いつかきっと、あなたが自分の力で生きていけますように」
優しい瞳が、ほほ笑む。
私も強い人になろう。
優しい瞳が、ほほ笑む。
私も強い人になろう。
夢千代
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